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jellyfishのひとりごと

観て、食べて、試して…重箱のスミをつついて(?)感想をつぶやいております♪

舞台【 雨 】


2011.06.24雨

≪あらすじ≫
江戸の町、両国橋。
古釘やら煙管の雁首などを拾って歩く金物拾いの徳は、
ある豪雨の午後、雨宿りに入った橋の下で、
新顔の老いた浮浪者から
「喜左衛門さまでは・・・・・・?」と声をかけられた。
そんな名前は知らぬと無視を決め込む徳に
勝手に話しかけては勝手に懐かしがるこの老人。

喜左衛門とは、平畠一の器量よし、「紅屋」の娘おたかのもとへ
二年前に婿入りした男なのだが、
その喜左衛門と自分がまるで生き写し、
しかもその男、去年の秋から行方不明になっている。
平畠とは紅花で台所を保っている北国の小藩で、
「紅屋」とはその平畠で一番の大店のこと。
そりゃ人違いだ、俺はこの橋の下に赤ん坊の時分に捨てられて、
物心ついた時にはもう屑拾いだった、と
老人に取り合おうとはしない徳だったが、
話を聞くうち、徳の脳裏に一つの思案が浮かぶ。
「どうにかしておたかという女を一目見ることはできねぇか」
北へ北へと咲きのぼって行く桜の花を追ううちに、
とうとう奥州平畠までやって来た徳。
しかし、たとえ姿かたちが生き写しの瓜ふたつでも、
徳は喜左衛門の事をなにひとつ知らない。
その上、江戸から宇都宮、宇都宮から白河、
白河から福島、米沢、平畠と北上するうち、
言葉(方言)の様子が変わってきたことに戸惑いを隠せない徳。
こんな方言では話せない、
これでは他人になりすますことなど出来やしない、
やっぱり明日の朝には江戸に戻ろう、
と諦めかけた丁度その時、徳は村人に見つけられる。
「紅屋の旦那様(さ)ァ・・・・・・」
「喜左衛門様(さ)ァ!」その声を聞き、
徳はいまやはっきりと紅屋喜左衛門を演じようと決意し、
記憶を失ったふりをしてゆっくりと村人の輪に入っていく・・・・・・。

公式サイトより


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ネタバレあり…の私的辛口(?)感想です

 
2011.06.24紅屋

新国立劇場で上演された、井上ひさし作の【雨】を拝見しました。
いつもは紀伊國屋ホールなどで上演しているこまつ座。
新国立劇場はちょっと大きいように感じましたかねぇ
大きな舞台を活かしていたのは廻り舞台を使った装置でしょうか。
巨大な五寸釘を思わせる柱を舞台中央に立て、五寸釘と柱を梁で結んで、
廻り舞台には傾斜のある台が置かれた部分と、
舞台を表裏に配置して、手際よく舞台を見せていました。
この傾斜ある上で演じる役者さんは大変だと思いますわ…。
筋力が相当必要だろうなぁ。
五寸釘と梁の様子が十字架のようにも見えてきて、
暗いラストを予見していたように思えました…

【雨】は初演から数えると、30年以上を経ての上演らしいけど
まったく、古くなくて…どんでんがえしの繰り返しで
面白い作品でしたわぁ
ただし…愉しい作品とはいえませんけど

井上ひさしさんの舞台らしく、音楽も盛りだくさんです。
こまつ座の特徴はミュージカルのように歌い上げない素朴なところ。
今回は山形弁も多かったので、前回のコクーンのように
字幕があれば良いのに…と途中でも思ったのだけど
観客の大半が解らないであろう山形弁を多用していたのは
そういった土地で他人に成りすまそうとした徳の気持ちを
疑似体験させる為だったのでは…と
見終わってから感じましたわ

平畠に入るまでは他人になりすますことなど無理と思っていた徳が
「天狗隠し」という茶屋の娘の言葉を聞いて、思い付く
『辻褄が合わなくなったら、「天狗隠しにあったから思い出せん」と言って
その場をなんとか切り抜け、やばくなったら金品を頂いてとんズラしよう!』
一幕の方は、喜劇要素が多く、
観客の中から笑いが起きるような陽気でにぎやかな場面や
井上さんの特徴でもある(?)下ネタ一歩手前の妖しい場面や歌詞
が散りばめられているのだけど、その笑いの背後には、
なんともいえない不気味な予感が漂っていて、緊張感がありました。

徳はそれほどの悪人に見えないのだけれど、
話が進むにつれて、殺人までも繰り返すようになってしまう。
発言が力をもつ紅屋の主人という立場、
何より、おたかという女房が気に入って、
全く周りが見えなくなってしまったように、ワタシには見えた。
(権力に固執するある人物が浮かんでしまったりもする

この徳を演じたのが市川亀治郎丈。
歌舞伎らしい所作、世話物のカッコ良い江戸弁、
田舎っぽい山形弁と巧く操っているように見えたのには流石と思ったわぁ
徳が喜左衛門を殺すシーンは、亀治郎丈の一人二役。
澤瀉屋らしい見事さで、不自然でなく演じ分けていましたねぇ
殺してしまってから、震えるところも含めて、
やっぱり所作の一つ一つが、粋だったし、綺麗でしたなぁ。
歌舞伎の世話物に出てくる滑稽だけど、哀れな市井の人。
強烈な印象として残りました

紅花問屋の跡取り娘おたかを演じたのが永作博美さん。
平畠一の器量よしというお役にピッタリ
キュートな笑顔の裏にあった藩の謀略を思えば、恐ろしいんだけど。
その謀略の中心人物的な役割を担っていたことを思えば、尚更。
でも、実はおたか自身も、この謀略の被害者であったように思えて
しかたがないのよねぇ。
冷淡で、愛人も居た本物の喜左衛門。
一途に自分を思ってくれて、優しい徳。
入れ替わった徳と暮らした日々の方が幸せであったんであろうと思う。
徳には知らせぬまま着替えさせた死に装束は
おとくにとっても、自分の感情の死を意味していたのでは…。

死にいく徳を抱きかかえたおたかは呟く。
『あなたが殺したと思っている喜左衛門は命を永らえ、
 紅屋と、藩と、紅畑を耕す百姓にとって必要な彼は
 死んだ喜左衛門の弟として、紅屋に戻り、自分と夫婦になると。』

今後は、紅屋の跡取り娘に生まれた使命の為だけに
おたかは生きていくということ。
そう思うと、おたかが切なくて仕方が無い
紅花の為、藩の為に、五寸釘の十字架に架けられて
命を落としたのは徳だけなのかなぁ

ワタシが思っていたラストはちょっと違った。
新顔の老いた浮浪者が紅屋に恩義を感じていて
最初から全て仕組んだことであった。
こういうラストなら、おたかを見守る観客であるワタシ達は、
少しは救われたかもしれないなぁ


女のため、権力のために、
徳はとことん喜左衛門になりきろうと努力し、山形弁も覚え
殺人を犯し、紅花栽培の極意も奪い取る。
他人になり済まそうと、そのひずみになる人物を消し去った結果、
自分が自分である証拠が何一つ残らなくなっているという
皮肉は痛烈だったわねぇ


【スタッフ】作=井上ひさし 演出=栗山民也
【キャスト】市川亀治郎/永作博美/梅沢昌代/たかお鷹/
      花王おさむ/山本龍二/山西惇/植本潤 ほか


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テーマ:舞台の感想 - ジャンル:趣味・実用

  1. 2011/07/11(月) 20:55:18
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