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jellyfishのひとりごと

観て、食べて、試して…重箱のスミをつついて(?)感想をつぶやいております♪

舞台 【 組曲 残虐 】


20091024194411


母や弟や恋人や同志たちのもとへ、
彼は死体となって戻ってきた。
コメカミの皮が剥ぎ取られている。
頬には錐で突き刺された穴がある。
アゴの下が刃物で抉られている。
手首に足首に縄目のあとがあるのは
天井の梁から吊るされて拷問されたからだ。
下腹部から大腿部にかけてが、
陰惨な渋色に変色している。
陰茎も睾丸も同じ色で、しかも、
大きく腫れ上がっている。
同志の中に医者がいて、丹念に調べた。
「この変色は弓の折れか棍棒でメッタ打ちに
殴りつけられて出来た内出血のあとです。
錐を突き立てたような傷あとが二十近くもありますが、
これらは畳屋で使う針を突き刺して抉ったものでしょう」
右の人差し指は折れてぶらぶらとしてる。
『蟹工船』のような小説を二度と書けないようにするために
刑事たちがへし折ってしまったのだ。
同志たちは後日の証拠のために、
何枚も写真を撮った。
おしまいに同志の千田是也と佐土哲二が、
ていねいにデスマスクをとった。
【組曲 虐殺】のチラシより

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ネタバレあり…の私的辛口()感想です
 

最近、また売れていると聞く『蟹工船』の作者小林多喜二。
先に書いたチラシで
その多喜二のお話らしいとは分かったのですが、
虐殺の記述にハッキリ言ってビビリました
ここまで陰惨な最期だとは知りませんでしたし…
でも、いのうえ先生は、悲惨な最期へ続く話を
悲惨・残虐な場面だけをただ見せる舞台としては
描かないハズと思いつつ劇場に向かいました

幕が上がると、
今回は後方のやや高い位置に据えられた
小曽根さんのピアノの音色
そして、 全員で歌う小林三ツ星堂パン店~
という明るい歌声で始まりました。
あぁ、良かった。こまつ座らしい明るい幕開けだぁ

あらすじってほどじゃないけど書いてみると…。

幼い頃から多喜二は家族と一緒に
父方の伯父の家に身を寄せていた。
なんにおいてもうまくいかない多喜二の父。
守銭奴の伯父は、学校に行かせているのを恩に着せ、
伯父が営む林三ツ星堂パン店で
早朝から多喜二たちをこき使っていた。
そんな生活が続いていた高校生の頃、
どのパンも直ぐに完売するのに、
一番安い誰にでも買えるハズの
代用パンだけがいつも売れ残る。
多喜二は『貧しい人でも買えるパンが何故売れ残るのか』
という疑問を抱き、やがて、
『どこかの誰かが貧しい人から
 パンを買うお金を奪っているのだ。』
 という考えに行き着いた…。


こまつ座の舞台はいつもながら、
役者(ピアノ奏者も演者のひとり)に穴がないなぁ
井上芳雄さんは日頃の王子様っというような
役ではなかったけれど、やっぱり輝いてました。
しなやかな強さを感じる多喜二でした

石原さとみちゃんはTVで見る以上にキレイで可愛らしかった。
純粋に真っ直ぐに多喜二を見つめて(目はキラキラ)ました。
多喜二の活動の妨げにならぬよう身を引く、
タキちゃんが切なかったわぁ

高畑淳子さんの演じる姉の姿は、
ある時はコミカルに、ある時は真面目に、弟を心配して、
舞台を見るワタシの心の支えでありました 

一途に多喜二を思い、多喜二の心はタキにあるのを知りながら、
同志として寄り添っていた妻・ふじ子の
神野美鈴さんの姿がまた良いのだ。

本来なら敵であるところの特別高等警察の二人がまた良い
やや強面で頭脳派の山本龍二さんと、
熱血ゆえに情にも厚い山崎一さんのお二人。
役目に忠実でありながら、人間として温かみのある
人間として描かれています。
二人にも、特高になった事情があり、
この特高も含め、全員が心を交わしながら、
明るく温かく切なく物語りは進んでいきます
しかしながら、そのまま幸せな温かい時間は続かず、
運命の日を迎えてしまうのです。

チラシにあった虐殺のシーンは舞台にはなく、
様子を伝えに来た山崎さんによって語られるのですが、
それでも惨い様子は伝わってきて
舞台を観てから、なかなか感情が言葉にならなかった

今の時代はしあわせですよね。ずっと。
【蟹工船】をはじめとする作品は、その当時
ほとんどが伏字になっていて、本来伝えたかった内容は
まったく文字として印刷されていなかったといいます
国民の大半である貧しい労働者を犠牲にして、
国家を強く、体裁を整えようとしてしていた時代、
言動の自由を奪われた労働者たちは弾圧され、
多喜二のような犠牲者がたくさんいらしたことでしょう。
そして、時は流れ、現在は自由にどんな意見であろうと
発言出来るようになりました。
幸せなハズなのです。みなが自由な意見を言い合えて…。

自由はある秩序を保つことで成立し得るものだと思うのですが、
ネットによって陰険なイジメが横行し、
日本では主に学生が、お隣の国ではアイドルが
自ら命を絶つ事件が続いています。
その一方で、ワーキングプアや派遣切りの心情として
【蟹工船】が注目を再び浴びていると聞くと、
本当の意味での自由なのでしょうかねぇと。
歪みがあちらこちらに見えますもん。
自由という言葉をはき違えた無秩序な行動や事件を
たくさん見聞きする昨今。
自由が目一杯まで振り切れた時、
それを抑える為に、大きな逆な力が働き、
再び、暗黒の時代がくるのでは
と、ちょっと背筋が寒くなってしまった。

まだ、キッチリまとめられないのだけど…
とりあえずの感想ということで。

多喜二が最後に胸に刻みたい場面…おしくらまんじゅう。
悩みも恐怖も…立場さえも関係なく、
お互いの冷たい身体を寄せ合い、押し合い
温めあっていたあの場面が、とびっきり温かく切なかったなぁ


作:井上ひさし
演出:栗山民也
出演:井上芳雄 石原さとみ 山本龍二 
    山崎 一  神野美鈴  高畑淳子 
音楽・演奏:小曽根真



劇場で売っていた代用パン買っちゃいました
翌日の朝ご飯にしたのですが…。
これっ普通に美味い。中まであんこがいっぱい。
代用パン風だったのねぇ

20091024194409





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テーマ:舞台の感想 - ジャンル:趣味・実用

  1. 2009/10/27(火) 23:59:14
  2. 舞台